「期日前」の正しい読み方は?きじつまえ・きひまえの違いと真相
選挙の公示や告示が近づくたびに、ニュース番組や街頭の案内看板で目にする「期日前投票」という言葉。耳で聞く音声と目で見る文字の間で、「これは『きじつまえ』と『きひまえ』のどちらが正しいのか」と違和感を覚えた経験を持つ人は少なくありません。SNSやネットの掲示板でも、選挙シーズンになるたびに「アナウンサーの読み方が気になる」「昔はきひまえと習った気がする」といった議論が巻き起こります。
日常会話では何気なく使われている言葉ですが、公職選挙法という法律上の正式な定めや、NHKをはじめとする報道機関の明確な放送基準が存在します。言葉の成り立ちから制度の歴史、不在者投票との実質的な違い、そして投票現場における最新の手続きまで、モヤモヤする疑問を一つひとつ論理的に解き明かしていきます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:公職選挙法および公的な放送基準における正しい読み方は「きじつまえ(投票)」であり、「きひまえ」は誤読または一部の誤った慣習に過ぎない。
- 要点2:法律用語の「期日(きじつ)」に和語の「前(まえ)」が結合した重箱読みの複合語であり、聞き取りやすさと誤認防止を最優先に命名された。
- 要点3:不在者投票と異なり事前の理由審査が大幅に緩和されており、入場券なしの手ぶら投票も含め、現代選挙において最も利用しやすい標準的制度として定着している。
「期日前」の正しい読み方と真相|きじつまえ・きひまえの決定的な違い
結論から明確に述べると、「期日前」の正しい読み方は「きじつまえ」です。「きひまえ」という読み方は、標準的な日本語としても法令用語としても認められていません。
公職選挙法(昭和25年法律第100号)の条文において、この制度の正式名称は「期日前投票」と規定されています。総務省の公式文書、中央選挙管理会、自治体の選挙管理委員会が発行するすべての公式資料においても、振出されるルビは例外なく「きじつまえとうひょう」で統一されています。
では、なぜ「きひまえ」という誤った読み方が一部で広がってしまったのでしょうか。その背景には、日本語の音読みと訓読みが入り混じる構造と、法律実務における特殊な慣習が存在します。
「期日」という単語は音読みで「きじつ」と読みます。一方、「日」という漢字には「ひ/び(訓読み)」「にち・じつ(音読み)」など多様な読みが存在するため、視覚的に「き・ひ・まえ」と訓読みを混ぜて誤読しやすいトラップがあります。さらに、法学や登記実務の古い慣習において「期日」を「きひ」と促音化させずに呼ぶごく狭い業界内の符牒が存在したことから、一部の有識者や学習者が「きひまえ」を専門的な読み方だと錯覚して記憶してしまった側面が指摘されています。
しかし、制度創設時からの公的見解として「きひまえ」という呼称が採用された事実は一度もありません。「期日(きじつ)」という定められた日の「前(まえ)」に行う投票という意味から、「きじつまえ」という読み方が唯一の正解です。

【報道の舞台裏】NHKや民放各社が「きじつまえ」で統一する明確な基準
テレビやラジオのニュース報道において、アナウンサーが言葉を発する際には、極めて厳格な放送用語基準が存在します。NHK放送文化研究所が定めている『NHKことばの手引き』や日本民間放送連盟の基準においても、「期日前」の読み方は完全に「きじつまえ」に指定されています。
放送現場で「きひまえ」や音読みを重ねた「きじつぜん」が採用されなかった理由には、音声伝達における明瞭性と誤認防止というジャーナリズム上の強い要請がありました。
- 「きじつまえ」が選ばれた理由:日常語として定着している「期日(きじつ)」の音をそのまま維持し、後ろに和語の「前(まえ)」を添えることで、老若男女すべてのリスナーが「投票日の前のことだ」と直感的に理解できるため。
- 「きじつぜん」が退けられた理由:「ぜん」という音は、電波を通じて耳で聞いた際に「期日前(きじつぜん)」と「期日全(きじつぜん=期日のすべて?)」などの同音異義語と混同されるリスクがあるため。
- 「きひまえ」が不可とされる理由:そもそも「期日」を「きひ」と読む標準語彙が存在せず、アナウンス用語として不適切であるため。
『広辞苑』『大辞林』『三省堂国語辞典』といった国内の主要な国語辞典においても、「期日前投票(きじつまえとうひょう)」として見出し語が立っており、「きひまえ」は項目すら存在しないか、誤読として注記される扱いです。マスメディアの放送基準と言語学的な正当性は、完全に一致しています。
制度の由来と歴史的背景|不在者投票との根本的な違いをデータで比較
言葉の読み方と同時に多くの人が混同しやすいのが、「期日前投票」と「不在者投票」の制度的な違いです。この2つは似ているようで、法的な位置づけと利便性が根本から異なります。
期日前投票制度は、2003年(平成15年)12月1日の公職選挙法改正によって新設されました。それ以前は、投票日当日に投票所へ行けない有権者はすべて「不在者投票」を利用する必要がありました。しかし、従来の不在者投票は二重封筒に投票用紙を封入し、厳格な事由該当性を証明しなければならないなど、手続きが極めて煩雑でした。
そこで、「投票日当日とほぼ同じ感覚で、投票箱に直接用紙を投函できる利便性の高い仕組み」として誕生したのが期日前投票です。この制度改革により、有権者の投票行動は劇的に変化しました。
| 制度区分 | 対象者・利用要件 | 投票方法と手続き | 編集部の見解・実務上のメリット |
|---|---|---|---|
| 期日前投票 | 選挙当日に仕事、旅行、冠婚葬祭、買い物などの予定がある有権者 | 名簿登録地の期日前投票所で宣誓書を記入し、投票箱へ直接投函 | 手続きが最も簡便。投票日当日の混雑や悪天候リスクを回避できる現代のデファクトスタンダード。 |
| 不在者投票 | 名簿登録地以外の遠隔地に滞在中の人、指定病院・老人ホーム入院者など | 滞在先の自治体選管や指定施設で投票し、用紙を外封筒・内封筒に入れて郵送 | 郵送日数を要するため事前申請が必須。出張先や入院中でも権利行使できる安全弁。 |
| 当日投票 | 選挙区内のすべての有権者 | 指定された投票所(入場券記載の場所)へ行き、投票箱へ直接投函 | 投票所が限定されるため、当日の急用や悪天候によって棄権につながるリスクがある。 |
総務省が公表している近年の国政選挙データを見ても、全投票者に占める期日前投票の割合は20%〜30%台前半で高止まりしており、有権者の3〜4人に1人が期日前投票を選択しています。「期日当日に投票所へ行くのが本則」という従来の観念は薄れ、実質的な投票期間の分散化が進んでいます。

【実務検証】手続きと持ち物のリアル|いつからいつまで行けるのか?
期日前投票を利用するにあたり、現場での実践的な手順や期間について確認しておきましょう。自治体の窓口取材や実務データをもとに、スムーズな投票のためのポイントを整理しました。
1. 期日前投票ができる期間と時間
期日前投票は、「選挙期日の公示日(または告示日)の翌日から、投票日の前日まで」毎日実施されます。土日祝日も関係なく利用可能です。
- 衆議院議員総選挙:公示日の翌日から11日間
- 参議院議員通常選挙:公示日の翌日から16日間
- 知事選挙:告示日の翌日から16日間
- 市区町村長・議員選挙:告示日の翌日から4〜6日間
受付時間は原則として午前8時30分から午後8時までです。ただし、商業施設や大学構内などに設置される特設の期日前投票所では、施設側の営業都合により開閉時間が異なる場合があるため事前の確認が推奨されます。
2. 持ち物と「手ぶら投票」の真実
自宅に届く「投票所入場整理券(投票所入場券)」を持参するのが最もスムーズですが、「入場券を紛失した」「まだ家に届いていない」「出先で手元にない」という状態でも投票は完全に可能です。
投票所に備え付けられている「宣誓書」に氏名・住所・生年月日を記入し、選挙人名簿と照合できれば、身分証明書の提示(※自治体によっては提示を求められる場合あり)のみでその場で投票用紙が交付されます。投票のためにわざわざ帰宅する必要はありません。
一般に知られていない盲点とネットの誤解
期日前投票に関しては、読み方以外にもネット上でまことしやかに囁かれる誤解や都市伝説がいくつか存在します。制度の信頼性を保つために、代表的な盲点を検証しておきます。
誤解①:「宣誓書の理由欄で嘘を書くと罰せられる?」
期日前投票所では、必ず「当日投票所に行けない理由」を選択する宣誓書への署名が求められます。「仕事」「冠婚葬祭」「レジャー・買い物」などの選択肢がありますが、これに対して「当日の予定が確定していないのに丸をつけると罪になるのか」と不安視する声があります。
実務上、選管職員がその理由の真偽を警察のように捜査することは一切ありません。公職選挙法施行令において「何らかの事由により当日投票所に行けない見込み」があれば足りるとされているため、「休日に私用で外出する予定がある」という主観的な判断で該当します。
誤解②:「期日前投票した票は当日まで開封されないから無効になりやすい?」
一部のSNSで見られる「期日前投票の票は管理が甘い」という言説は完全な誤りです。期日前投票された票が入った投票箱は、毎日の受付終了後に厳重に施錠され、各政党・会派から選ばれた立会人の署名・封印が施された上で、選管の金庫などで選挙当日まで厳重に保管されます。開票も当日の一般票と同時に行われるため、有効性に何の差異もありません。

【プロの結論】情報リテラシーと言語認知から見出すべき教訓
言葉の読み方一つをとっても、社会的な認知や心理的バイアスが色濃く反映されます。なぜ多くの人が「きじつまえ」という正解を知りながらも、「きひまえ」という響きに知的な響きを感じて引っ張られてしまうのでしょうか。
言語社会学や認知心理学の観点から見ると、人間は「日常語(きじつ)よりも、少し難解に見える規則外の読み方(きひ)のほうに専門的価値がある」と無意識に誤認する傾向(難解性バイアス)を持っています。法律用語に「遺言(ゆいごん/いごん)」「競売(きょうばい/けいばい)」といった慣用読みと専門読みの二重構造が存在することが、その錯覚を助長してきました。
しかし、民主主義の根幹を成す選挙制度において、行政が最も重視したのは「難解な権威づけ」ではなく、「あらゆる国民に誤解なく伝わる平易さとアクセシビリティ」でした。だからこそ、重箱読みであっても誰にでも通じる「きじつまえ」が正式な言葉として選ばれ、運用され続けています。
【判断基準】期日前投票を活用すべき人・当日投票にこだわるべき人
- 期日前投票を活用すべき人:
- 当日の天候悪化(台風や大雨・大雪)による外出困難リスクを排除したい人
- 週末の予定をフレキシブルに確保し、混雑を避けて数分で投票を終えたい人
- 商業施設など生活動線上で買い物のついでに済ませたい人
- 当日投票を待つべき人:
- 選挙戦最終日まで各候補者の舌戦や情勢変化を極限まで見極めたい人
- 地域の指定投票所(地元の小学校など)に行くこと自体に伝統的な意義を感じる人
【期日前の読み方】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「期日前」を「きひまえ」と読んだら、公務員試験や国語のテストで不正解になりますか?
A1:不正解または減点対象となる可能性が極めて高いです。公職選挙法上の正式名称、NHKの放送基準、国語辞典の記載いずれにおいても「きじつまえ」のみが正解と定義されています。「きひまえ」は慣用読みとしても公認されていません。
Q2:なぜ「期日前(きじつ・ぜん)」とすべて音読みで揃えなかったのですか?
A2:音声で「きじつぜん」と発音した場合、「期日前」なのか「期日全(期日のすべて)」なのかが耳で聞いて判別しにくいためです。放送や日常会話における聞き間違いを防ぎ、直感的な分かりやすさを重視して「前」を訓読みの「まえ」とした経緯があります。
Q3:期日前投票所には、誰でも手ぶらで行って投票できますか?
A3:はい、可能です。投票所入場整理券が手元になくても、投票所に備え付けの宣誓書に氏名・住所・生年月日を記入すれば、選挙人名簿と照合の上で投票用紙が交付されます。出先や仕事帰りでも手ぶらで立ち寄ることができます。
Q4:投票日当日に18歳になる人は、その前の期日前投票期間に投票できますか?
A4:期日前投票を行う日にまだ17歳(翌日に18歳の誕生日を迎える前など)の場合は、期日前投票ではなく「不在者投票」の扱いとなります。投票日当日には18歳になっていても、期日前投票を行う当日に選挙権年齢に達していない場合は手続きが異なるため、投票所の係員に申し出てください。
まとめ:正しい言葉遣いと制度理解でスマートな一票を
「期日前」の正しい読み方は、迷うことなく「きじつまえ」です。「きひまえ」という呼び方は誤読が一人歩きした俗称に過ぎず、法令上もマスコミの放送基準上も根拠はありません。
言葉の正しさを知ることは、制度そのものを正しく使いこなすための第一歩です。期日前投票は、現代社会の多様なライフスタイルに合わせて設計された極めて合理的で自由度の高い権利行使の手段です。読み方のモヤモヤをすっきり解消した上で、手ぶら投票も含めた便利な制度をスマートに活用してください。 (出典: 期 日前 読み方(Yahoo!ニュース))