稀代の逃げ馬マルターズアポジーの軌跡!キタサンとの激闘と種牡馬の現在
ゲートが開いた瞬間、迷わずハナを奪い、後続をぐいぐい引き離してレースを支配する――。平成後半の競馬界で、そんな爽快かつ潔い走りで熱狂的なファンを生み出した個性派の逃げ馬がマルターズアポジーです。
中距離からマイル戦線まで重賞3勝を挙げ、大舞台では現役最強馬キタサンブラックら強豪と真っ向勝負を演じました。ターフを去ったいま、マルターズアポジーはどのような日々を送り、その貴重な血統はどのように次世代へと受け継がれているのでしょうか。武士沢友治騎手との名コンビの記憶、激闘の競走成績、そして気になる種牡馬としての現在まで、その魅力を余すところなく紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:福島記念・小倉大賞典・関屋記念を逃げ切って重賞3勝をマークし、GIの舞台でも果敢な大逃げでファンを沸かせた快速馬。
- 要点2:主戦・武士沢友治騎手との強い絆や、絶対王者キタサンブラックの展開を揺るがした激闘など、記憶に残る名勝負を数多く創出。
- 要点3:引退後は種牡馬入りし、内国産希少血統の継承者として産駒が地方・中央で出走。現在は功労馬として穏やかな余生を過ごしながら血を繋いでいる。
【重賞3勝の蹄跡】福島記念・小倉大賞典・関屋記念を制した圧倒的逃げ脚
マルターズアポジーの競走馬人生におけるハイライトといえば、なんといっても重賞3勝を挙げた圧巻の逃げ切り劇です。通算成績40戦8勝という堂々たる数字のなかでも、ローカル重賞を中心に見せたハイペースの逃げっぷりは圧巻でした。
重賞初制覇となった2016年の福島記念(G3)では、軽快に飛ばして後続に影をも踏ませず、鮮やかな逃げ切り勝ちを収めました。続く2017年の小倉大賞典(G3)では、トップハンデタイの斤量を背負いながらもスタート直後から果敢に先頭へ立ち、力強い粘り腰で連勝を飾ります。
さらにファンの度肝を抜いたのが、同年のサマーマイルシリーズ第3戦関屋記念(G3)でした。新潟の長い直線は逃げ馬にとって極めて過酷とされていましたが、直線に入っても脚色は衰えず、鮮やかに押し切ってマイル重賞のタイトルまで手中に収めました。距離やコース形態を問わず、「ハナを切れば自分のリズムで粘り込める」という天性のスピードと勝負根性は、まさに天下一品でした。
【キタサンブラックとの激闘】GIの舞台で見せた「玉砕覚悟」の大逃げ
マルターズアポジーが多くのファンの胸を打った最大の理由は、大舞台でも自分のスタイルを一切曲げない潔さにありました。当時の古馬中長距離路線には、圧倒的な先行力と勝負強さを誇る絶対王者キタサンブラックが君臨していました。
多くの実力馬がキタサンブラックの先行抜け出しを恐れて牽制し合うなか、マルターズアポジーは2016年の有馬記念や2017年の宝塚記念、天皇賞(秋)、有馬記念といった大舞台で、迷わずハナを奪いに行きました。特に2016年の有馬記念では、果敢なハイペースで逃げて大観衆をどよめかせ、レース全体の緊張感を極限まで高める立役者となりました。
自らがペースを作ることで強豪馬たちを揺さぶり、競馬の面白さと醍醐味を教えてくれたその走りは、「負けてなお強烈なインパクトを残す逃げ馬」として、競馬ファンの記憶に深く刻み込まれています。
【武士沢友治との名コンビ】人馬一体でファンを魅了した熱き絆
マルターズアポジーを語る上で絶対に欠かせない存在が、主戦を務めた武士沢友治騎手です。デビュー戦から数多くのレースで手綱を取り、馬の持ち味である卓越したダッシュ力と前向きな気性を誰よりも理解していました。
武士沢騎手といえば、愚直に馬の力を信じて思い切ったレースを展開するスタイルで知られる関東の名手です。マルターズアポジーに跨る際も、「ハナを奪って自分の競馬に徹する」という強い信念を持って騎乗し、人馬一体となって数々のビッグタイトルを勝ち取りました。
武士沢騎手自身も「アポジーは自分の騎手人生においてかけがえのない宝物」と公言しており、ファンからも「ブッシー&アポジー」の愛称で親しまれました。2024年に武士沢騎手が鞭を置きJRA競馬学校の教官へ転身した際にも、真っ先に思い出の名馬としてマルターズアポジーの名が挙げられたほど、ふたりの絆は特別なものでした。
【引退理由と血統の背景】父ゴスホークケンから受け継いだ貴重なスピード血統
マルターズアポジーは8歳となった2020年の中山記念(11着)を最後に現役を退きました。陣営が発表した引退理由は、長年にわたる過酷なレースでの奮闘を踏まえ、脚元への負担や年齢的な衰えを考慮し、無事に種牡馬としてのキャリアへ送り出すためでした。40戦ものタフなキャリアを大きな故障なく走り抜いた頑丈さも、本馬の大きな美点です。
その血統背景には、日本競馬における貴重なスピードの系譜が流れています。
- 父:ゴスホークケン(朝日杯フューチュリティステークスの勝ち馬、ストームキャット系・バーンスタイン産駒)
- 母:マルターズヒート(アメリカ産、フェアリーステークス勝ち馬)
- 母の父:Old Trieste(エーピーインディ系)
父ゴスホークケンは若くして世を去ったため後継種牡馬が極めて少なく、マルターズアポジーはその唯一無二の直系後継馬として大きな期待を背負って種牡馬入りを果たしました。
【種牡馬としての現在】産駒のデビューと血脈を繋ぐマルターズアポジーの今
現役引退後、マルターズアポジーは北海道新ひだか町のアロースタッドで種牡馬生活をスタートさせました。その後、個人牧場や育成拠点へ拠点を移しながら、内国産の貴重なスピード血統を求めるオーナーたちのもとで種付けを継続しました。
初年度産駒は2023年にデビューを迎え、地方競馬を中心に快速を披露する産駒が次々と勝ち上がりを決めています。父譲りの抜群のスタートセンスと前向きな気性を受け継いだ子どもたちが、ダート短距離から中距離戦線で着実に結果を残しています。
現在のマルターズアポジーは、関係者の手厚いケアを受けながら、種牡馬および功労馬として穏やかな環境で暮らしています。サンデーサイレンスの血を含まない貴重なアウトブリード血統として、配合の自由度が高く、今後も血統地図の片隅で確かな光を放ち続けることが期待されています。
【マルターズアポジー】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:マルターズアポジーの獲得賞金や主な競走成績はどのくらいですか?
A1:通算成績は40戦8勝。獲得賞金は約2億9,000万円に達します。主な勝ち鞍は2016年福島記念(G3)、2017年小倉大賞典(G3)、2017年関屋記念(G3)の重賞3勝です。
Q2:なぜキタサンブラックがいるレースでも逃げることができたのですか?
A2:マルターズアポジーは天性のダッシュ力とスピードの持続力に長けており、陣営と武士沢騎手も「逃げてこそ真価を発揮する」という明確な信念を持っていました。キタサンブラック陣営側も無理に競りかけるリスクを避けて2番手に控える形をとったため、淀みないペースの大逃げが成立しました。
Q3:産駒の特徴や活躍状況はどうなっていますか?
A3:産駒は父譲りの卓越したスピードと先行力を武器にしており、主に地方競馬のダート短距離〜マイル戦で勝ち星を積み重ねています。仕上がりの早さとタフさを兼ね備えた実戦向きの競走馬が多く輩出されています。
まとめ:個性派逃げ馬が遺した情熱とこれからの期待
競馬の歴史において、記録だけでなくファンの「記憶」に強く刻まれる名馬は一握りしか存在しません。マルターズアポジーは、どんな相手が立ち塞がろうとも迷わず先頭を走り続け、競馬というドラマの熱量を極限まで引き上げてくれた唯一無二の逃げ馬でした。
武士沢友治騎手との阿吽の呼吸で駆け抜けた数々の重賞制覇、大舞台でキタサンブラックらを従えてハナを切った雄姿は、今なお色褪せることがありません。ターフを去り、自らの血を引く産駒たちが全国の競馬場で先頭を駆け抜けるいま、マルターズアポジーが灯した逃げ馬の炎は次の世代へと脈々と受け継がれています。 (出典: マル ターズ アポジー(Yahoo!ニュース))