上田二朗の怪演と名言!阿部寛が魅せたトリック不滅の裏設定
上田 二 朗という不世出のキャラクターを、日本のエンタメ史においてどう位置づけるべきだろうか。テレビ朝日の深夜枠から産声を上げ、やがて日本中を熱狂の渦に巻き込んだ伝説のミステリーコメディ『トリック (テレビドラマ)』。その中心で圧倒的な異彩を放っていたのが、自称・天才物理学者の男だ。傲慢で臆病、巨躯を揺らしながら珍妙な奇声をあげ、しかしどこか憎めない。日本のテレビドラマ界において、彼ほど視聴者の脳裏に焼き付いて離れない怪人物は他に類を見ない。
作中の正式表記である「上田次郎」の検索やファンコミュニティでの表記揺れとして親しまれる上田 二 朗というアイコンは、俳優・阿部寛のキャリアを決定づけた決定打でもあった。仲間由紀恵演じる売れない奇術師・山田奈緒子との掛け合いは、2000年代以降の映像エンタメにおけるバディものの金字塔となり、四半世紀が経過した現在もなおSNSや配信プラットフォーム上で熱狂的な支持を集めている。
天才物理学者・上田次郎の魅力と伝説のトリックを徹底解剖
日本科学技術大学で教鞭を執る天才物理学者・上田次郎。一見すると長身で端正なルックス、世界的な権威を思わせる肩書を持ちながら、その実態は「極度のオカルト恐怖症」かつ「筋金入りの見栄っ張り」だ。怪奇現象の解明を依頼されるたび、プライドが邪魔をして断れず、結果として山田奈緒子を巧みな言葉(あるいは家賃や食事の援助)で巻き込んでいく。
彼の魅力の根底にあるのは、完璧なエリート像と情けない人間味のすさまじいギャップだ。難解な物理学用語を並べ立てて煙に巻いたかと思えば、少しでも不気味な物音がした瞬間に山田の後ろへ隠れ、奇声を発して気絶する。自らを誇示するために編み出した自己流格闘術「上田流空手」や「通信空手」で敵を威嚇するものの、肝心な局面ではまったく役に立たない。この滑稽で愛すべきアンバランスさこそが、視聴者を惹きつけてやまない最大の要因である。
阿部寛の怪演が光る!堤幸彦監督との化学反応と撮影秘話
今日、日本を代表する実力派俳優として君臨する阿部寛だが、この作品に出会う前は二枚目モデル出身の俳優という枠組みに苦しんでいた時期があった。その殻を完全に打ち破り、怪優としての才能を爆発させたのが演出家・堤幸彦とのタッグだ。
堤監督が仕掛ける独特のテンポ、画面の端々に仕込まれた小ネタやシュールな演出に対し、阿部は一切の照れを捨てて全力で応えた。現場でのアドリブ合戦や大げさな身振り手振り、絶妙な間合いで放たれる奇天烈なリアクションは、阿部自身の身体性とコメディセンスが融合して生まれた奇跡の産物だ。二枚目俳優がプライドをかなぐり捨てて全身全霊で挑んだ「怪演」は、ドラマの枠を超えたカルト的な熱量を生み出した。
「なぜベストを尽くさないのか」あの名言に隠された真実
シリーズを通じて幾度となく発せられる上田の決め台詞、「なぜベストを尽くさないのか(Why do you not do your best?)」。この言葉は、彼の著書のタイトルでもあり、現代のファンにとっても彼の代名詞として深く刻まれている。
一見すると高圧的で無責任な煽り文句に聞こえるが、物語の深層を読み解くと、この言葉にはどこか哀愁と哲学が漂う。常に恐怖に怯えながらも、最終的には奈緒子とともに危険な因習やインチキ霊能者のトリックへ立ち向かっていく上田自身の、不器用な自己暗示のようにも響くからだ。自著『どんと来い、超常現象』をドヤ顔で掲げる姿は、滑稽でありながら、理不尽な超常現象や悪意に満ちたトリックへ物理学の光を当てようとする彼の意地を象徴している。
仲間由紀恵演じる山田奈緒子との絶妙なバディ関係
ドラマの核となっているのは、言うまでもなく上田次郎と山田奈緒子の関係性だ。仲間由紀恵が演じる奈緒子は、生活困窮にあえぐ天才奇術師。ドライで金にがめつく、上田の虚栄心を冷ややかに見下しながらも、事件解決のために手を組む。
恋愛感情に発展しそうで決して発展しない、しかし互いの弱点を知り尽くした唯一無二のパートナーシップ。男女のバディものにありがちな安易なロマンスを徹底して排除し、どこまでも利害の一致と小競り合いを貫いたことが、逆に二人の絆を強固に見せた。危機的状況で見せる阿吽の呼吸と、日常に戻った瞬間の冷淡な塩対応。このコントラストが、何シーズン重ねても色褪せないドラマの推進力となった。
ファン必見の裏設定:日本科学技術大学教授への道のり
熱心なファンを唸らせる細かな裏設定も見逃せない。物語の初期、上田は日本科学技術大学の「助教授」だった。奈緒子を利用して数々の怪事件を「自らの力で解決した」と学会に報告し続けた結果、彼は教授へと昇進を果たす。この出世欲にまみれた背景すらも、劇中で見事なコメディリリーフとして機能している。
さらに、彼が溺愛する愛車「次郎号(初代・パトリオット)」をはじめとする小道具へのこだわりも凄まじい。度重なる事件の中でボロボロになり、ドアが外れ、ハンドルが取れ、最終的には見るも無残な姿になりながらも乗り続ける執着心。細部にまで張り巡らされたキャラクター設定の厚みが、単なる一過性のギャグドラマに終わらない世界観を構築している。
『トリック劇場版 ラストステージ』から配信へ!TELASAやAmazon Prime Videoで観る現在地
深夜ドラマからスタートしたシリーズは、やがて東宝配給による大規模な映画化へとスケールアップを遂げた。完結編となった『トリック劇場版 ラストステージ』では、マレーシアのジャングルを舞台に壮大なスケールで物語が描かれ、長きにわたる二人の旅路にひとつの美しい終止符が打たれた。
シリーズ完結から年月が経った今も、その熱は冷めるどころか新たな世代へと広がっている。現在では、テレビ朝日系の作品が充実するTELASAをはじめ、Amazon Prime Videoなどの主要配信プラットフォームで全シーズンおよび劇場版がラインナップされている。かつてリアルタイムで熱狂したファンだけでなく、Z世代をはじめとする新しい視聴者がオンデマンドでその唯一無二の世界観に触れ、上田次郎のシュールな魅力にハマる現象が起きている。色褪せることのない名作ミステリーコメディの金字塔を、今あらためて見返す絶好の機会だ。 (出典: 上田 二 朗(Yahoo!ニュース))